卒論

2016年6月15日

 先日、ご夫婦でお越しのお客様とお話しをさせていただきますと、その奥様がえらく水上先生のことにお詳しい。しかし、水上文学愛読者というには若干お若い(と言ってしまうのも変な話ですが)。これは! と思い、根掘り葉掘りと聞いてみると、昔、とある大学の卒業論文で水上勉著「金閣炎上」と「五番町夕霧楼」を取り上げて調査研究を進めたとのこと。話が進むにつれて、どんどんその時の記憶がよみがえってきたようで、目がキラキラと輝きを増して話に熱が帯びてくるようでした。しかし、ある瞬間にふっと我に返って「あら、うちの旦那さんは……どこにいきましたでしょうか?」と一言、「あっ、すでに展示室にお入りのようです」とお伝えすると、すぐに展示室に向かわれました。
 学生時代には文学に熱を上げて、卒論提出とともに思い出にかわり、現在は旦那様とお二人で思い出のプチ旅行というところでしょうか。古い思い出に浸りながら、その上に新しい思い出を積み上げていくというのも、なかなかに良いもののようですね。このようなお客様がもっと増えてくれると、新しい水上文学の姿もみえてくるのではないでしょうか。皆様の思い出の持ち込み、心からお待ちしております。(S)