物語は、さびしさと不安を胸に「息をひそめるようにいる」地球最後の一頭となったゾウと、どこからともなく落ちてきた「赤いりんご」との出会いから始まる。リンゴを一口かじったゾウは、誘われるがままに旅に出て、かれらはやがて広い海へとたどり着く。そして・・・。「むかし、『ぞう』という動物がいました」という一文で始まるプロローグから、この話が、すでにゾウがいない世界における回想であることがわかる。絵本としての美しさはもちろん、リンゴや海は何の象徴かなど、読み手の解釈にまかされている部分も多く、子どもから大人まで読むことができる一冊だ。