保存と展示に付きまとう葛藤

2012年5月3日

    

 先日、新聞の紙面に気になる記事が掲載されていました。それは、福井県立図書館で開催されている、福井ゆかりの作家関連の資料展示コーナーについて記されたものです。県立図書館に足を運ばれたことがある方は、全面ガラス張りで明るく雰囲気の穏やかな館内をご覧になられたことと思います。実際、読書や勉強をしたり、資料を探したりする場合に自然光は大変気持ちがよく最適な光源です。しかし、貴重な資料にとっては劣化のもとにもなります。今回、福井県立図書館ではこのような状況を鑑み、貴重な原稿資料を展示しているケースに布をかぶせて、閲覧時にのみ布をめくるという処置(展示方法)をとっているという記事でした。
 学芸員が常に考えることは、取り扱っている資料の保存管理と公開展示という相反する命題です。なぜ相反するのかというと、後世に出来るだけより良い状態で伝えるためには、収蔵庫の中で一定の温湿度且つ遮光性を保つことが重要ですが、それでは一般には公開できません。一般に広く公開(展示)するためには、どんなに気をつけても資料の劣化は免れません。これは学芸員にとっては永遠の課題なのかもしれません。どこで線を引くのか?どもまでなら許されるのか?心の中で常に葛藤が繰り返されます。そんな状態でも、一般の博物館、美術館では公開することこそが施設の役割ですので、公開するための最善の方法を模索しながら展示を行っています。
 小生は新聞の紙面から、限られた施設や予算の許す範囲内で、保存と展示という相反する命題にチャレンジした展示設置者の葛藤を読み取ってしまいました。
 何事もそうなのかもしれませんが、物事は一つの方向からだけ見たのでは全てを理解するのは難しいですね。皆さんも、これから博物館や美術館に行ったときに、「何でこんなに薄暗いんだろう?これじゃあ良く見えない。」と思うだけではなく、じゃあなんで明るくすることができないのか?という風に反対から物事を考えて施設を見学してみたら新たな発見があるかもしれませんよ。見えてくるのは、頭を悩ませてる学芸員だけではないはずです。(S)